アニメ「ピアノの森」を見ていたら、去年ワルシャワでショパンの生家など行ったことを思い出していました。
もう何か随分遠いことのように思えてしまいますが、まだ1年経っていないのですね。
もう一つ、昔読んだ童話を思い出していました。
森に放置されたピアノがあって、けれど蓋は開かず、皆通り過ぎる。
ある日、事故で指を1本なくし、絶望してピアノを弾くことをやめたピアニストが通りかかる。
ピアノは彼に呼びかけ、彼が触れると蓋は開く。
彼はピアノを奏で、そして9本指のための曲を作ろうと思う。
…そんな話だった気がして。
探してみたら、見つかりました。
竹下文子『星とトランペット』(講談社「青い鳥文庫」1982年)所収「野のピアノ」で、
ストーリーは概ね記憶通りでしたが、森ではなく原っぱでした。
「ひなぎくのさく野原のまん中に、ふるいピアノがありました。
なぜ、いつから、そこにピアノがあるのか、だれも知りません。」
いつか自分もこんな話がかけるようになったらいいなと感じて、
記憶に残っていた気がします。
いつかなんて日は来ないのだろうけれど。
本棚の奥から、見つかってよかったです。
「そうだね。ぼくは、ぼくにしかつくれない曲を作ろう。
ぼくには、まだ九本の指がある。
この指で、やさしいやさしい曲をひこう。
十本の指先に心を集めるのはむずかしかった。
だけど、九本なら、すこしやさしいかもしれない。
一本分だけ、やさしいかもしれない」
(竹下文子「野のピアノ」より)