剣と人形

前回触れなかった『影の獄にて』の
第三部「剣と人形 クリスマスの夜」について、
少し触れておきます。

セリエやヨノイの話をしたクリスマスの夜に、ロレンスは「わたし」の家に泊まります。
家には、「わたし」の妻と幼い息子と娘がいます。
ロレンスが、子供たちに「おやすみ」を言いに行くと、
子供たちはそれぞれ、クリスマスにもらったプレゼントを手に、幸せそうに眠っていました。

「わたし」の妻は言います。

「ねェ、あなた、あなたも息子に剣や兵隊のオモチャをあげないで頂きたいの。
もめごとが起こる根源は、きっとここにあるのだと思うわ。」
(『影の獄にて』p.248)

ロレンスは、そうは思わない、と言います。
男の子から剣を取り上げたり、女の子から人形を取り上げたりすることが、
あなたが望むような世界をもたらすとは思えない、と。
そうして、彼の戦場での体験や、
迫り来る日本軍に怯える街で出会った女性の話をするのですが、
それは、置いておいて…。

ロレンスの話で興味深かったのが、剣の型の話でした。
彼は色々な国で実際見てきたのだけれど、
キリスト教圏の剣は十字の形で、回教圏の剣は三日月の形だ、と。

「そして、月を意識するもうひとつの民族である日本人が、
これまた微妙に反った剣を帯びていたことも、意義ふかいことだった。」
(『影の獄にて』p.254)

ところで、『戦場のメリークリスマス [影の獄にて]映画版』ですが、
先日、森下文化センターで行われた講座の帰りに寄った、
森下の古書ドリスさんで、見かけました。
妙なご縁というか、いい品揃えですね~(^^)。

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