谷山浩子さんのアルバム『もうひとりのアリス』(1978年)に、
「不思議なアリス」という曲があります。
夜はペパーミント ト・ト・卜
雲はダイヤモンド ド・ド・ド
歌がこぼれる る・る・る
手のひらからあふれちゃう
あたしはアリス 不思議なアリス 今15才
可愛らしい声でこんな風に歌われるので、
「可愛いね~」「メルヘンチックだね~」という印象で、
聞き流されてしまうことも多いであろうこの歌。
自分はずっと、「怖い歌だよね…」と思っていました。
あたしはアリス 弟はナルシス 絵本の中で暮らす
とびきり美しい とびきり素敵な物語つくる
あたしのナイト 闘って死んだ あたしのために死んだ
とっても悲しい 一晩泣いたの 涙は出なかった
大学時代に、自分とまったく同じ解釈をしている友人に出会いました。
概ね、「少女の残酷さ的なものを歌っているよね」で、意見の一致。
この歌の最後は、英語で次のように。
Well, my dear, I long to see you die.
やっぱり怖い。
ところで、この話を思い出したのは、三原順さん『ビリーの森 ジョディの樹』を読み返していて、
昔は不思議なものや
恐ろしい話が好きだった神話や童話の中で
ひっきりなしに行われる殺人さえ
なんて歯切れの良い世界なのかと愛しさえしたそしてそこへつながる扉を開けたいと願った
(三原順『ビリーの森 ジョディの樹』第2巻、白泉社文庫、p178)
…とジョディが振り返る場面で、背景にアリスが使われていたからでした。
私の好きな物が”良い物”で
私に都合の良いことが”善”だった頃
背景が三原順さんの指定だったのかは謎ですが、突然ふと、この話を思い出したのでした。