春の居場所

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鷺沢萠さんが「はみだしっ子」の年表を作っていて、という話は、
白泉社文庫『はみだしっ子』2巻の解説「「異常なほど魅力的」な作品」で
鷺沢萠さん自身が書いています。
それで、「つれて行って」の裁判シーンでマックスが「八歳です」と証言するのが辻褄が合わないと。

「余談だが、今でも私はあの「八歳です」という台詞は何かの間違いだろうと信じている」

BSマンガ夜話でも語っていた話ですね。

これについては、17年前に自分が「立野の三原順メモノート(12)マックスの「八歳です」という発言について」で、「11歳です」を「八歳です」と誤植されたと解読しているわけですが。

昔、音楽系で知り合った女性が、「鷺沢萠さんが好き」と話してくれたことがあります。
どうしてそういう会話になったかは覚えていません。
いえ、かなり唐突に、そう言われた気がします。
自分が「三原順さんが好き」というとき、しばしば何かを伝えたい意味があるように、
彼女も鷺沢萠さんが好きということで自分に何かを伝えたかったのではないかと思います。
自分は、鷺沢萠さんは知っていたけれど、作品を読んだことがなく、話が繋がらず。
どうして彼女にとって鷺沢萠さんがそういうキーワードとなる作家だったのかは、結局わからないままになってしまい。
ただ、そんな風に聞いたことは今も覚えています。

鷺沢萠さんの最後の小説「春の居場所」を読んでみました。
名前を題材にした連作の本に収録されています(鷺沢萠『ビューティフル・ネーム』2004年新潮社、2007年新潮社文庫)。
在日コリア三世の話などが続いて、そして、「春の居場所」では、主人公の女性が、
日本の家になじめなくなって留学して、アメリカで日系三世の男性と結婚します。
死後に発見されたというこの未完の小説は、ここでぷっつりと終わります。

重松清さんの解説で、鷺沢さんのこんな発言が載っていました。

「自分が外人であるという経験をしたか、しないかによって、ひとの成長って違ってくるんだなと思います」

鷺沢さんがどんな話を書きかかったのだろうと、かろうじて想像させてくれています。

鷺沢萠さんが自ら命を絶って10年が過ぎました。
立野の誤植解読は伝わっていましたでしょうか。
三原順復活祭、どこかで盛り上がっていて下さい(^^)。

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