やあ ボクの悪意達

はるか昔、人を殺す夢を見たことがあります。
「自分を殺して欲しい」と懇願されて、ナイフを渡され、
そのナイフを、ミゾオチから心臓に一突きで的確に刺してしまった夢です。
目が覚めたとき、冷や汗が出ていて、自分の心臓はバクバクしていて、
ナイフの感触が手に生々しく残っていました。

「でも、血は出ていなかったんだ、まったく」

その夢の話を、女の子にして、そうしたら、

「ナイフを抜かなかったからでは」

と、冷静に反応されたりして。
けれど怖さは強烈な印象を残したまま横たわり。

「本当は死にたくなくて、殺して欲しいって言っているだけだって、
判っていながら、刺してしまったんだ」

三原順さんの、セルフマーダーシリーズを読んだとき、
その夢を少し思い出しました。

「やあ ボクの悪意達」

自分の悪夢を思い出すキーワード。

数年後。

自分の目の前で、自らの腹にナイフを突き立てて「死ぬ」と訴える人と接するに至り。
でも、彼のミゾオチにナイフを刺しはしなかった。

祝福を。

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