えっとまず、先日の日記のPメールの話ですが、
相手の番号に心あたりはないものです。謎ですね。
さて、日記に書きたいことは色々あったのですが、
あわあわしているうちにタイミングを逃してしまいます。
んで、今日はちょっと遅ればせながら漫画の引用に関する裁判の話。
一部の方はご存知かと思いますが、
「脱ゴーマニズム宣言」を書いた関西大講師の上杉聡氏(と出版元)を相手どって
小林よしのり氏が「漫画のカットを無断引用され著作権を侵害された」
として訴えていた裁判の判決が、8/31 に東京地裁で出ましたね。
結果は、「漫画を批判する論説の理解を助けるためにごく一部を引用したもので、
著作権法上の適法な引用」との判断で、小林氏の請求を棄却する判決。
立野としても漫画の評論なんか書いているので気になるところなのですが、
小林氏は既に東京高裁に控訴しており裁判が継続する模様なので、
今後も経過を見守るつもりです。
(個人的には今回の判決は「当然のこと」と思っています)。
以前どこかで「夏目房之介さんが漫画のコマの引用で訴えられたみたいですね」
と発言してしまったことがあるのですが、この裁判の記事で:
「マンガと『戦争』」など漫画批評の多いマンガ・コラムニストの夏
目房之介さんは数年前から、許諾を得ずに批判対象の漫画を引用し始めた。
「きちんとした漫画批評の基礎作りとして、自分がやらないと道がつかない」
と思ったという。出典を明らかにして、著作権法に違反しないことを厳密に確
認するなどしたが、何件かはクレームがあった。
(朝日新聞1999年9月1日朝刊
「漫画と活字、壁崩す一歩 『ゴーマニズム宣言』引用は適法 」記事より)
とありましたので、クレーム程度で裁判には至っていない…ようですね。
失礼しました。
で、今日の日記のタイトルでもある「無断引用」という言葉。
記事中、特に原告側の発言に見受けられるのですが、何か違和感ありませんか?
立野は何か変だよね…と思っていたのですが、先日ネットニュースでも
同じように違和感を訴えていた方がいらっしゃったので、
やっぱりそうですよね…と、妙に同感してしまいました。
著作権法についてある程度理解している人や
自分で物を書くような人なら、「無断引用」という言葉に違和感を感じても
不思議はないと思うのですが、どうでしょうか。
何故なら、「引用」するのにいちいち許可を得る慣習もないし、
著作権法上も「引用」は一定の条件を満たす限り
無断でやっていいことになっているからです。
著作者にも著作権所有者にも、正当な引用を禁止する権利はありません。
(注: もちろん、「転載」「盗作」などは話が別です)。
引用は無断でやるのが普通であって、許可を取る方が特殊です。
にも関わらず「無断引用」と呼ぶことによって
それがさも悪いことであるかのように言われると(言葉のイメージ操作ですね)、
仮に漫画の世界では特殊扱いが当たり前だったにせよ、
他の一般の世界のことを知っている人たちが奇異に感じたとしても
不思議はないでしょう。
裁判の論点も「適法な範囲の引用か否か」であって、
無断か否かというのは関係ないんじゃないかと思います。
著作権法に引用を認める条項がある趣旨の一つは、
「批判を封じ込めるために著作権法が乱用されることを抑止するため」
だと聞いたことがあります。
今回ざっと見た記事ではこの辺を論じている文章はなかったのでわかりませんが、
その辺も含めて、今後の成行きを見ていきたいと思います。