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第一章から第五章は、「はみだしっ子」や「ルーとソロモン」のシリーズなど、 それまでに出版されていた三原順さんの漫画から印象的なフレーズを抜き出して 発表順ではなく内容で分類した語録です。 基本的に作品のネームを並べただけですが、 こうして断章形式でまとめられても充分読みごたえのある内容になっています。 ネームだけを抜き出してもこれだけ読みごたえのあるマンガというのは珍しいのではないでしょうか。 ところどころ、出典に関する三原順さんのコメントがあるのも見逃せないです。
はみだしっ子メモリアルは、4人のキャラクタ紹介に加え、 著者メモリアル(著者ノート)が掲載されています。 著者メモリアルは次のような内容です。
高校生のころ授業中に書いた小説もどきの話が「はみだしっ子」 のルーツになっているといった話が紹介されています。 「はみだしっ子」と三原順さんの長い歴史を感じさせます。 著者メモリアルは文章のみが白泉社文庫「はみだしっ子」 第6巻末尾に再録されています。
あとがきは、「そもそも私がマンガを描き始めたのは、多分、私が昔から、 親であれ、兄達であれ、友人であれ、他の人の気持ちを『わかった』 と思えたことがないせいだと思います」で始まる3ページの文章です。 三原順さんは、自分は自分に理解可能な世界を構築したくて創作を始めたけれど 結局キャラクタたちは自分が理解不可能なまま作り上げた型(タイプ) であったようだと述べています。 そして、キャラクタの描き分けというある意味創作の技術的問題を、 それがうまくできないのは自分の理解の視野が狭いせいなのだろうと書きます。 自分の考える人間は自分の頭の中でしか棲息しない生き物だという問題から 目を外らさずに生きた三原順さんの真剣な姿勢 (…それは呪いなのかも知れませんが…)を改めて感じます。 最後に、シリーズ名の「はみだしっ子」をつけて下さった小長井編集部長への 謝辞があります。
巻末には三原順さんの創作ノートの断片のコピーが(ほんのごく一部ですが) 掲載され、グレアムのメモノートの草稿、 発表された作品には現れなかったネームの断片などが垣間見えます。
「もし人間が自分が人間だという意識を 罪悪感を持つ(べき)(持っているほど高等な)動物だという(潜在)意識を 持っていなかったなら」
なお、カバー折り返しの著者紹介で、 三原順さんの愛読書として紹介されているのは、 「シートン動物記」「ルパンシリーズ」「ママに捧げる犯罪」 「悪魔と裏切者」「夜」です。