自分は、音楽は割と何でも聴きます。嫌いな音楽は殆んどありません。 CD100枚聞いたら、5枚くらいだ〜い好きになって、10枚くらいなんと な〜く好きになって、1〜2枚、嫌いになるのがあるかなーくらいで、後は好 きでも嫌いでもない音楽になります。
音楽を聴く時は音楽雑誌やネットニュースなどの記事も参考にしますが、 結局は自分の耳で聴いてみないことには何も言えないと思っています。だから、 自分が「好きだ」とか「嫌いだ」とか言う時には、必ず聴いた上で言っていま す。
Spiral Life の音楽をなぜ自分がこんなに好きになったのか、自分でも実 はまだ良くわかっていません。初めて聴いたのはFlourish でした。自分はテ レビも殆んど見ないので新しい音楽との出会いはもっぱらレンタルCD屋さん に頼っているのですが、Flourish も夏の長期レンタルで20枚くらい一気に 借りた内の一枚でした。(凄く好きになったので結局直後に買ってますよ、念 のため ^^;)
なんとなく心地よくても、もう一度聴いてみたいと思わせてくれるCDが 殆んどない中、Flourishは1曲目から自分を魅きつけていました。声の質が 凄く良かったんです。Gardenを聴いたのもそれが初めてだったんですが、英 語だからせいぜいサビくらいしか歌詞はわからなくて、それでも心地よく感じ たのは、やっぱり音質と声の質が自分に合っていたからでしょう。
昔、スターリンの遠藤ミチロウさんが(初期の)パティ・スミスについて 「歌っている内容よりも、声の質に圧倒された」ようなことを対談で語ってい ましたが、声の質ってのは非常に重要ですよね。フローベール以後、作家は自 分の文体について責任を持たざるを得なくなったって言われますけど、音楽っ ていうのはその様式(声だけでなく…)を文学より更に意識せざるを得ないも のなんでしょうね。
これは「いい悪い」ではなく単なる自分の趣味なんでしょうけど、妙に格 好つけた歌い方ってのには馴染めないんです。佐野元春好きですけど、妙な巻 き舌には時々ついていけなくなります。あと、妙に甘ったるい声も駄目です。 だから、男子アイドル系はそれだけで馴染めないのが多いです。じゃあどんな 好きなのって言われると、それは Spiral Life のようなのですよ ^^;。
「愛」とか「夢」とか「自由」とか、使いふるされた言葉がありますよね。 こういった言葉に振り回されているだけの歌を聴いていると、時々悲しくなり ます。某一時期話題になったバンドの歌なんか聞いていると、「愛」とか「自 由」とかいう言葉がやたら出てくるけれど、「ああ、この人たちは『愛』も 『自由』も真剣に考えたことがないからこんな歌が歌えるんだな」って思わせ てくれただけでした。中江兆民は「自由とは貰ふべきものにあらず、取るべき ものなり」と言いましたが、愛も、夢も、同じなのではないでしょうか。
Spiral Life の歌には「愛」とか「夢」とか「自由」とか、そんな言葉は 殆んど出てこないですよね。でも、だからこそなのかも知れないけど、いっそ う「愛」や「夢」や「自由」を、深く感じさせてくれるんです。STEP TO FAR で「君に語れる言葉が欲しい」と歌う瞬間、NEROで「僕の菜の花 咲いた」と 歌う瞬間、崩れ落ちそうな一瞬の言葉の中に、そういったイメージを感じとっ て泣きそうになります。
Spiral Life の歌は、自分のそんなインスピレーションを連鎖反応させて くれる。だから好きなのかも知れません。でも本当言うと、自分でも良くわか らないんです。
1996年4月21日(4月23日一部加筆修正)
立野 昧